なぜ夏の嵐を「台風」と呼ぶのか

日本では、夏から秋にかけて南からやってくる嵐を「台風」と呼びますよね。改めて字を見てみると「台」に「風」という、なんとも不思議な組み合わせです。

台風の語源は、中国南部の福建省や台湾地域で使われていた「大風」(tai fung/タイフーン)という言葉に遡ります。この地域では、強い風を意味する「大風」が日常的に使用されていました。

16世紀頃、この「大風」という言葉が西洋の航海者たちの耳に入り、彼らの言語に取り入れられました。英語では”typhoon”、フランス語では”typhon”などと音写され、広く使用されるようになりました。

興味深いことに、西洋化された”typhoon”が再び中国に逆輸入され、「颱風」という漢字が当てられました。この「颱」という字は、「風」に「台」を組み合わせた造字です。

日本では、明治時代の終わり頃に、当時の中央気象台長だった岡田武松氏が気象用語として中国語の「颱風」を採用しました。これが日本で広く使われるきっかけとなりました。

1946年に当用漢字(現在の常用漢字)が定められた後、「颱」は常用漢字に含まれなかったため、「台」の字で代用されるようになりました。これにより、現在の「台風」という表記が一般的になりました。このように、「台風」という言葉は、東アジアの方言から始まり、西洋を経由して再び東アジアに戻ってくるという、興味深い言語の旅を経て今日に至っています。